9月と10月に相次いで台風が日本列島を襲った際は、鉄道会社が計画運休を行ったこともあり、多くの企業が社員に帰宅命令を出したが、大型台風が迫っているのに社員以外を居残らせた場合、訴えることはできるのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
台風直撃の日、アルバイトで働いている電子機器の工場では社員たちが夕刻から帰宅。私のようなバイトや派遣社員、下請け会社の社員が工場の管理、警備などを任されました。要はお前たちだけで工場を守れよってことです。本社の私たちに対する扱いはあんまりで、労働基準局に訴え出てもよいですか。
【回答】
台風などの自然災害に備え、労働者を早期に帰社させるのは、雇用契約に基づく業務命令によりなされるものです。早期帰宅を命じる目的は、労働者の帰宅を確実にして必要な休息を確保したり、自宅の防災措置を講じさせるなどの一種の福利厚生といえます。
ところで、アルバイトは会社との雇用契約にあります。派遣労働者の雇用関係は派遣元との間にありますが、業務上の指揮命令は派遣先から受けます。職場の指揮命令に従う点では、アルバイトや派遣労働者は正社員と同じです。
同じ仕事で待遇に差別があるのは問題です。昨年末に公表された「同一賃金同一労働ガイドライン」は、企業に正社員と有期雇用労働者及び派遣労働者との間の不合理な待遇相違の解消等に向けた取り組みを求め、賃金だけでなく福利厚生の面も課題としています。