ただSさんには年2回のボーナスがあり、それにはほとんど手を付けていないという。それを切り崩すという手もありそうだが……?
「田舎にいるシングルマザーの母は今のところ自活できていますが、貯金はまったくありません。今は健康ですが、いつ病気や介護などでお金がかかるかもしれませんし、将来こっちで一緒に住むことも視野に入れないといけないでしょう。40歳にもなると自分の老後も意識し始めます。そう考えると、とてもボーナスには手を付ける気が起きません」
かくしてSさんはずるずると年齢を重ね、着実に生涯独身への道を歩んでいる。せめて夕食を自炊すれば少しは余裕ができそうだが、「仕事で疲れているのに、狭い部屋で、たいして美味くもないご飯を1人で食べても……」と言われれば、返す言葉も無い。Sさんの周囲には似たような境遇の独身男子がゴロゴロいるが、意図的なのか無意識なのか、彼らとの会話の中で「彼女」や「結婚」といったキーワードは一切出てこないそうだ。