今年8月、5年ぶりに公表された公的年金の“定期健診”にあたる「財政検証」。今回の財政検証は、「年金は当てにならない」という現実を改めて私たちに突きつけた。「年金博士」として知られる、ブレインコンサルティングオフィスの北村庄吾さん(社会保険労務士)が語る。
「財政検証では、将来の年金額の水準(所得代替率)が、今後どれくらい変わるのかが試算されました。年金は甘く見積もっても、将来は今より2割も減ることが明らかになったのです」(北村さん・以下同)
今年6月にも、金融庁が「老後資産は2000万円不足する」との報告書を発表。政府はこれまで、「100年安心の年金制度」を掲げていたにもかかわらず、早い話「匙を投げた」のだ。
だが、年金は方法次第で増やすことができる。今回の財政検証では、今の65才と同水準の年金をもらうには、今30才の人は68才4か月まで、40才の人は67才2か月までと、70才近くまで働かなければならないことも示された。だが、定年後も働くつもりなら、逆にこれを利用したお得な制度もある。年金の「繰り下げ受給」だ。
繰り下げ受給とは、年金の受給開始を遅らせると受給額が増える制度。現在の年金の受給開始年齢は原則65才だが、1か月遅らせるごとに0.7%、1年で8.4%増え、最大5年まで繰り下げられる。70才から受給を開始すれば実に42%の増額だ。
反対に、早くもらうと年金が減る「繰り上げ受給」もある。1年繰り上げるごとに受給額は6%減り、60才開始だと30%も減額される。北村さんが注意点を指摘する。
「一度受給を開始すると繰り下げは選択できなくなります。また、いつ受給を開始するかは寿命が大きく左右するため、自分の家系が長生きか短命かも参考にするとよい」