老後資金のベースになるのが退職金だ。65歳以降も公的年金を受給しながら長く働きたいと考えているなら、この退職金のもらい方と使い方の発想の転換も必要になる。
退職金には「退職一時金」として一括でもらう方法と、運用利回りが上乗せされる毎月分割の年金方式でもらう方法がある。税制上は控除が大きい一時金のほうがメリットがあるが、公的年金が少ない場合など、「毎月の生活費が不安」と分割を選ぶ人も少なくなかった。
しかし、公的年金を受給しながら働く場合、退職金を分割でもらうと、公的年金+給料+退職年金で毎月の収入が大きくなり、それに伴って税金・社会保険料がハネ上がってしまう。65歳から公的年金と給料のダブルインカムが見込めるのであれば、定年時の退職金は税金が安くなる一括でもらうメリットが大きい。
誤解が多いのが退職金の使い途だ。“年金博士”として知られる北村庄吾氏が指摘する。
「日本人は借金が嫌いで、定年までに住宅ローンを払い終えていない場合、退職一時金で繰り上げ返済するケースが多い。借金はなくなったが、手元にあまりお金が残らないというのは考えものです。
60歳以降も働くなら、退職金は残して毎月住宅ローンを払い続けたほうがいい。住宅ローンは団体信用生命保険に加入しているから、万が一の時も残債は保険から支払われ、家族に借金は残らない」
これらの指摘を踏まえて退職金のもらい方、使い方を今から見直しておきたい。
※週刊ポスト2019年11月29日号