昨今の若者は、海外に目を向けない「内向き」志向だといわれている。実際、内閣府が今年6月に発表した若者に対する意識調査で、留学、外国に居住希望をする割合は、韓国、米国、英国など7か国のうちいずれも最下位。海外に生活基盤を置きたくないという若者たちの、本音を探った。
20代男性会社員・Aさんは海外出張に行くことになったが、本当は「避けて通りたかった」という。
「先輩からは、おいしい食事に酒を楽しめるし、街歩きなんかもできるからと羨ましいと言わんばかりに言われましたが、僕はぜんぜん乗り気ではありませんでした。だって、海外にはトイレの温水洗浄便座がほとんどないじゃないですか」
TOTOが初代ウォッシュレットを発売したのは、1980年。当初こそ「お尻を洗う」というコンセプトが理解されにくかったのか、普及率も低かったが、今では日本の家庭の約80%が温水洗浄便座を設置しているというデータもある。一方で、世界に目を向けると日本ほど普及している国はまずないだろう。トイレは温水洗浄便座でなくてはイヤだというAさんは、学生時代に行った長期海外旅行での苦い経験を明かす。
「言いにくいことなのですが、もともとお腹がゆるくなりやすいうえに、お尻の皮膚がデリケートらしく、固いトイレットペーパーだとすぐ荒れて、痛くなってしまうんです……。以来、海外旅行に行くときは、簡易お尻洗浄器はもちろん、赤ちゃん用のお尻ふきも必須でした。トイレットペーパーの質も日本が一番です」(Aさん)
20代で、就職浪人中のBさんは、現在、公務員受験に向けて勉強中。やはり海外志向はないという。
「大企業のリストラが相次いでいるニュースを見て、将来、自分もリストラされるのかなと不安になりました。正直、人生は波風の立たない“平凡”であってほしい。だから就活時も安定していそうな会社ばかりエントリーしたのですが、結局全滅しました。実は学生時代に短期留学も経験しているのですが、生活するにはやっぱり日本が安心できるということを改めて感じただけでした」(Bさん)