10月12日に東日本を直撃した台風19号は各地に甚大な被害をもたらした。内陸部でも「住みたい街」ランキング常連の神奈川・武蔵小杉が水害に見舞われ、47階建てのタワーマンションでは地下に設置された配電設備に水が流れ込み、停電や断水で住民の生活に大きな支障を及ぼした。1週間近くエレベーターが停止したほか、トイレが使えなくなるという事態に陥ったのである。
その直後、住民の70代男性は憔悴しきった表情でこう話していた。
「30階より上の自宅まで階段で30分以上かかる。終の棲家にしようと思っていたが、こんなリスクがあるなんて話が違う……」
最先端の建築技術の粋を集めて建てられるタワマンだけに、落胆も大きい。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が指摘する。
「タワマンは免震・制震に優れ、地震には強い。だが今回のケースは、水害で配電設備がダメージを受けたため電気系統がやられてしまった。通常、タワマンの配電設備は地下を含めて最下階に設けられている。ほぼすべてのタワマンに共通する構造的欠点なのです」
また、地震の際にも思わぬダメージを受けることがあると榊氏は指摘する。
「東日本大震災で液状化現象が起きた千葉県浦安市では、地中に設置されている上下水道管が損傷。周辺のマンションでもトイレが使用不可となり、市が設置した仮設トイレは長蛇の列。2時間待ちになったこともありました」
総戸数が大きく、住人の多いタワマンだけに、ひとたび被災すれば想定外の混乱を招きかねないのだ。