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老後に預貯金を持っていると医療・介護負担増の未来が来るか

貯金額次第で75歳以降は資産減

 介護施設を利用した場合、介護保険で賄われる利用料の自己負担(1割)に加えて、居住費や食費を支払わなければならない。居住費や食費は収入によって軽減措置がある。「夫の年金16万円、妻6万円」などの住民税非課税世帯の2段階(年金と給料を合わせた収入が夫婦で月80万円以下)であれば、夫婦のどちらかが特養(ユニット型個室)に入所したときの基本的な費用(食費、居住費、介護保険自己負担の合計額)は毎月約5万2000円で済む。

 ところが、同じ収入でも、預貯金が1人1000万円以上(夫婦2人なら2000万円以上)の世帯は軽減措置が適用されないため、毎月の支払額は約13万円に跳ね上がる。これは前述の厚労省資料に掲載されている金額で、すでに実施されている。

 ちなみに、介護保険には自己負担額が一定額を超えたときに還付される「高額介護費」制度があるが、居住費や食費は対象外なので支払いが増えても1円も還付を受けることができない。今後は医療費の基準にも、この「1人1000万円」の預貯金ラインが適用される可能性が高い。

 厚労省の「国民医療費の概況」(平成29年度)によると、75歳以上の1人あたり医療費(自己負担額)は男性で年間約10万円。2割負担になれば約20万円に上がる。老後資金を蓄えても、75歳からは貯金1000万円を超えると、医療費や介護費用で資産が急激に減らされていく仕組みが完成する。

※週刊ポスト2019年12月20・27日号

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