親の預金を引き出せる
方法は大きく3つある(別掲図参照)。「成年後見(任意後見)」「家族信託」「財産管理委任契約」だ。いずれも親が認知症になる前に、親と契約を結んでおく。
「成年後見(任意後見)」は裁判所から認められた後見人が親の資産を管理する制度だが、親が認知症になったあとで申し立てると、裁判所が第三者の弁護士などを法定後見人に指名し、家族が親の資産を扱えなくなる。そこで、親の判断力がしっかりしているうちに子を後見人に指名してもらっておくのが任意後見だ。
「家族信託」は親が自分の資産の一部を子に信託して管理・運用してもらう制度だ。信託された資金は親の口座から子名義の信託口座に移転し、子(受託者)は信託された資産について広い裁量権を持つが、あらかじめ信託された財産しか管理できない。
「財産管理委任契約」は親の判断力はまだしっかりしているけれども、体力が衰えたり、体の自由がきかなくなってきたときなどに、不動産の管理や預金の出し入れなどを子に委任するものだ。家の権利証や親の実印・銀行印、預金通帳やキャッシュカードなどを子が預かっておく。公証人役場で作成した財産管理委任契約書を提示すれば、銀行窓口で親の預金を引き出すことができる。
どの制度を使って親の資産を管理するかを親と話し合って正式な契約書を作る際に、これからの社会保険料の負担や、年金貯金の相続のことまで考えて、親の金融資産が1000万円を超えていれば、子や孫に生前贈与することまで決めるのが賢明だろう。
では、どういう場合にどの制度を選ぶのが便利か。