12月15日に米中貿易交渉の第1段階が合意された。米国は対中関税の一部を引き下げ、中国は米国産農産物の購入を拡大することとなり、当面は米中両国の貿易摩擦激化の懸念は後退した格好だ。この合意を受け市場はどう反応したのか、また今後の見通しはどうなるのか。カリスマ主婦トレーダーとして知られる池辺雪子さんが考察する。
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米中貿易交渉の第1段階の行方には、市場も大きく注目していました。交渉の結果が発表される前から日経平均や米国株どちらも上昇の勢いが強くなっていたことが印象的です。
しかし最近のマーケットの傾向を見ると、こうした相場に大きなインパクトを与える経済イベントがあった時、上昇の材料が現れても素直に反応しないケースもあります。例えば、12月6日に発表された11月の米雇用統計で、非農業部門の雇用者数が前月から26万6000人増と予想の18万人を超えて増加したにも関わらず、ドル円は30銭ほど上昇したのち、スルスルと発表前の価格水準に戻り、往って来いの展開になりました。株式市場もそこまで影響がなかったように思えます。このようにポジティブな材料が、必ずしも市場ですぐ反応するとは限らないことは覚えておきましょう。
今になって米中協議が進展しようとする理由は何でしょうか。中国では豚コレラの問題も影響しているようです。豚コレラが猛威をふるう中国では、ここでアメリカに対し関税をかけると、豚肉の価格が上昇し中国国内の消費の冷え込みに繋がるのではないかという懸念もあります。対するアメリカでは、来年の大統領選挙に向け国内の票集めに注力したいトランプ政権が、貿易交渉の合意を早めるのではないか、という市場関係者の見方もあります。米中協議の行方は、会談の内容だけでなく、アメリカと中国の経済事情に着目し、状況を見極める必要があるでしょう。
ちなみに米大統領選挙の前年は米国株が上昇しやすく、米大統領選挙の年と翌年はドルが上昇しやすいというアノマリーもあるので、その点は留意しておきましょう。