生前整理ならではの「思い出」箱
大津さんの生前整理の特徴は[思い出]箱を作ることだ。
「シート上に取り出していくと、親にとって生きてきた証のように思える物が出てきます。物としては不要だけれど心に直結する思い出の品。これは理屈抜きで[思い出]箱へ。高齢になると思いが募って手放せないものが増えるので、時間をかけて考え、最終的には1箱にまとめましょう」
家にあふれる物の中から、親本人が最後に残したい物を選び出す作業こそ、生前整理の究極の目的だという。
「中身を吟味せずどんどん捨て、短時間で終わらせるという方法もありますが、私の経験上、後々捨てた物が気になり、後悔する人が多いのです。ぜひ物とじっくり向き合う時間を大切にしてください」
親の集中力が維持できるよう1回(1か所)あたりの作業時間は[45~60分]程度に。[半年から1年以上先にゴール]を設定して、穏やかな日常生活の延長線上で、少しずつ進めるのがいい。
「親の生前整理を子供が手伝うと、物の価値観や作業のスピード感で、もどかしい思いをするかもしれません。私の実父の生前整理には10年もかかりました。でもおかげで、見事な旅立ちをした父に対し尊敬の気持ちでいっぱいになりました。
そして何よりうれしかったのは、親が幼少だった頃の思い出や、大切にしてきた物に触れ、親の長い人生を初めて垣間見られたこと。親子でも、意外にこんな機会は貴重です。親の生前整理は、子供にとっても意義のある一大イベントといえるかもしれません」
※女性セブン2020年1月2・9日号