働き方改革に合わせた年金の新制度には、「働きながら年金を増やせる」チャンスが多い。その目玉が、働きながら年金を受給する際、収入合計が一定額を超えると年金がカットされる「在職老齢年金制度」(在老)の見直しだ。
政府は当初、経済財政の基本方針で「在老廃止」を掲げていたが、65歳以上は現行制度が据え置かれる。しかし、シニアにとってチャンスとも捉えられるのは、むしろ“65歳未満の”在職老齢年金が大きく変わることだ。
65歳までの雇用延長が義務化され、60代前半男性の就業率は8割に迫っている。さらに、ちょうどこの世代は年金受給開始年齢の65歳より前に“得する年金”(厚生年金の特別支給)をもらえる世代(男性は1960年4月以前生まれ)でもある。
本来なら、“得する年金”をもらいながら雇用延長で働き、給料と年金のダブルインカムで老後資産を増やせるチャンスのはずだ。
ところが、現行の在職老齢年金制度では、65歳未満の人は月給と年金(厚生年金の報酬比例部分)の合計が「28万円」を超えると、超過分の半額が年金からカットされてしまう。特別支給の年金額が月10万円の人が月給38万円稼いでしまうと合計収入が48万円となり、年金は全額停止されて1円ももらえないのだ。
そのため、この世代のサラリーマンは「“得する年金”を全額もらうために働き方を短時間勤務にセーブして安い給料で我慢する」か、「年金を捨ててでもバリバリ働いて給料を多く稼ぐか」という、実に“もったいない”二者択一を迫られ、せっかくのチャンスをつかめずにいた。