2021年からの英語民間試験と記述式の導入をめぐって揺れに揺れた大学入試センター試験が今年もやってくる。共通一次時代を含めると40年に及ぶ大学入試センター試験には数多のドラマがあった。その中には、試験会場に向かう道中に関するものも少なくない。
電車運休トラブルから救ったタクシードライバー
2017年のセンター試験初日には、JR函館線(北海道)の特急が車両の不具合で運休するというトラブルが発生。JR北海道は受験生7人をタクシーで試験会場に送った。うち1人の受験生を乗せたのが、タクシー運転手の小山順一氏(72)だ。
朝8時過ぎ、JR滝川駅前で客待ちしていると駅員と受験生が来て「岩見沢まで1時間10分くらいで行けるか」と聞かれたという。
「距離は50キロ弱で、吹雪いていれば2時間以上かかることもありますが、この日は快晴で行けると判断。『大丈夫です』と答えて車を走らせたんです。予定通り到着し、彼は『ありがとう』と礼を言って試験会場に入っていきました」(小山氏)
都立大学駅に「都立大学」がない
都立大学(現・首都大学東京)がセンター試験の会場になると、地方出身者の混乱を招く。同大は1991年に東京都目黒区から八王子市にある京王相模原線の南大沢駅近くに移転したが、東急東横線の「都立大学駅」という名称は残ったまま。そのことを知らない受験生が、同駅で降りるミスを犯してしまう。
1994年には2人が間違えて下車し1科目に間に合わず、2000年には1人が近くの別の会場で受験することに。実は、移転時に東京都や大学が京王電鉄に「都立大前」という駅名を希望したものの、東横線との混乱を避けて却下された経緯がある。1994年に八王子市選出の都議会議員が東急電鉄に駅名の変更を促すも、東急電鉄は「親しまれているから」と拒否した。
●イラスト/トーマス・オン・デマンド(アスタリスク)
※週刊ポスト2020年1月17・24日号