昨今は「一億総活躍社会」や「生涯現役」といった言葉を耳にする機会も増えているが、働ける間ずっと働き続けることが本当に幸せなのだろうか。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏(46)は「なんで年寄りも活躍しなくちゃいけないんだ」「休んでもいいだろ」と日々考えており、2020年8月をもってセミリタイアすることを決めたという。なぜそのような考えに至ったのか、中川氏自身がその思いについて述べる。
* * *
「一億総活躍」とか「年金繰り下げ受給をすると得」なんて言葉は、少子高齢化の進行で日本の年金財政が厳しくなったから、「頼むからお前らジジババになっても働いてくれ。で、頼むから年金受給する前にうまいこと死んでくれ。そうすればお前に対して年金払わずに済むんでネ!」と言ってるようにしか思えません。
だったらさっさと65歳で年金を受給するようにして、後の人生、働くも働かないも自分の意思次第、といった方向に持っていきたいです。政府やホワイトカラー高齢者の活躍を謳う人(本気かどうかは知らないけど)は、「これまでの知見を活かし」やら「ベテランならではの経験を活かし」みたいに言うけど、難しいと思いますよ。
72歳になった自分が30歳の上司から「次の打ち合わせ、ぜひとも中川さんのアイディアが必要なんです! 今回は本気で勝ちに行くプレゼンを前にしたものなので頼みますよ!」なんてことを2046年に言われるワケがない。「生産性」を伴う仕事ってものはやっぱり若者のためのものなのです。
正直、現在46歳の私はこの5年後にもネットニュースの最前線で仕事をしていられる自信はまったくありません。32歳の時にネットでニュースを配信する、という事業にフリーランスとして参入して14年。多分、もう自分の役割は終わったと思います。
それまで文字のニュースと言えば紙メディアが全盛の時代、「ネットでニュース読もうぜ!」的なことを2006年頃のIT系企業が積極的に推進し、たまたま私もその一員となり、編集者になりました。