中国のIT企業・アリババは2017年10月、事業立ち上げ資金として3年間で1000億元(1兆5500億円相当、1元=15.50円で計算)を投じるとして、シンクタンクであるDAMO・アカデミーを設立した。
北京、杭州といった中国国内のほか、シンガポール、イスラエル、アメリカ、ロシアなどグローバルでラボを設立、独自に多様な研究を行うほか、世界各国の大学など、研究機関と緊密な関係を結び、共同研究を行っている。この中には、中国科学院と共同で行う量子コンピューターの研究なども含まれる。
各先端分野の一流研究者たちが参加、協力しているDAMO・アカデミーでは、毎年年初のタイミングで、彼らの知識を一つにまとめ、最先端技術のトレンドを発表している。
2020年1月2日に発表された2020年の10大トレンドは以下の通り。
【1】AIはセンサーから認知へと発展のステージが変わる
【2】計算・メモリ保存の一体化はAIの計算力のボトルネックを突破する
【3】工業インターネットの超融合が起こる
【4】機器間における大規模な協力が可能となる
【5】モジュール化がチップ設計の参入障壁を低くする
【6】規模化された生産レベルでのブロックチェーン応用が大衆化される
【7】量子計算が開発競争時代に突入する
【8】新材料が半導体機器の革新を推し進める
【9】データの秘匿保護のためのAI技術が加速する
【10】クラウドがIT技術のイノベーションセンターとなる
これらの中でいくつか注目したい点がある。半導体開発は現在、大きな壁に突き当たろうとしている。
5G(第5世代移動通信システム)サービスの普及は、IoT(モノのインターネット)、クラウド、エッジコンピューティングの急速な拡大を促し、それは半導体チップの需要増に繋がる。伝統的なチップ設計モデルでは効率よく世代交代、カスタマイズなどに対応することができない。
ただ、この点については、どのような用途にも自由に対応できるオープン標準の命令セット・アーキテクチャであるRISC-Vなど、様々な機能をモジュール化することで、チップ設計については迅速化が可能である。
しかし、半導体の線幅は既に素材の限界まで細密化が進んでいる。シリコン主体の典型的なトランジスタ構造では半導体産業の持続的な発展を維持するのは難しくなっており、電子、スピンを損耗せずに移動させることを可能にする新材料の開発が不可欠となっている。