現在、トポロジカル絶縁体、二次元超伝導材料などの開発が進んでいるが、それに成功すれば、その研究者もしくは組織は、莫大な利益を得ることができるだろう。
また、現在のコンピューターの基本構造であるジョン・フォン・ノイマン型では、急速に進化するAIへの対応が困難になりつつある。なぜなら、ジョン・フォン・ノイマン型はメモリ保存領域と計算領域が分離されており、データの“読み込み・書き込み”を多用するAIのニーズと合致しなくなっており、処理速度の高速化に関してボトルネックとなっているからだ。
この問題を解消するためには、脳神経のようにデータ保存と計算が融合し一体化したような構造を見つけ出し、データのやり取りを減らす必要があるが、ここも開発のテーマとしては宝の山である。
5Gは通信速度の点で革命的な変化をもたらすが、それによってあらゆるものをインターネットに接続させて情報を融合させるということが実用段階に入るだろう。ただ、その際に問題となるのは情報の秘匿である。それぞれの間において、簡単にアクセスできない部分を確保する必要があるが、そのためにはブロックチェーンのさらなる進化が必要となるだろう。
量子計算、量子通信といった量子理論を使った新しい技術分野を含め、これからの数年間、様々な局面で技術開発競争が激化するだろう。
日本のマスコミでは、中国が国家による補助金によって科学技術の発展を支えていると批判的に伝えることもあるが、中国経済の強さは、アリババ、テンセント、華為技術(ファーウェイ)などに代表される民営企業による強さである。彼らには、飽くなきイノベーションへの追求があり、アメリカに勝るとも劣らないベンチャー精神がある。
もし、アメリカが中国の技術革新の力を弱めたいなら、華為技術に対するようにアリババに対しても圧力を加える必要があるだろう。しかし、それにはどんな理由を付ければよいのだろうか。アメリカを以てしても、中国のイノベーションを止めるのは難しい。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。