禁止命令や禁止仮処分が出ている間に、遠くへ引っ越したり、連絡先を変えたりして、親族に追ってこられないようにすれば逃げ切れるはず──と思いきや、そうとも言い切れない。実は、親族であれば意外と簡単に役所で「戸籍」や「住民票」が閲覧できてしまうため、転居先がつきとめられて、押しかけられることも少なくない。司法書士法人「ABC」代表の椎葉基史さんが説明する。
「そんな時に有効なのが、『住民票閲覧制限の支援措置』です。ストーカー被害やDVなどがあれば、警察などの意見をもとに市町村が対応してくれます。支援措置の期間は1年間ですが、必要に応じて延長もできます。もし閲覧制限をかけていたのに家に押しかけられた場合は、DV防止法やストーカー規制法、各市町村の迷惑防止条例などで対応できます」
ここまで手続きを終えれば、事実上の絶縁といえるだろう。
「捜索願不受理届」で警察は動かない
いきなり裁判所の命令や処分に頼るのはハードルが高いと感じる人や、家族と話し合った上で距離を取りたい人は、弁護士に相談する手もある。家族で直接話し合おうとするとヒートアップして手が出てしまう場合や、話し合うこと自体が苦痛な場合は、代理人弁護士を立てて『今後、一切の連絡は弁護士を通じて行うこと』とすれば、直接のやりとりを控えさせられます。
弁護士に依頼しなくても、家庭裁判所に話し合いの場を設けてもらい、中立的な調停委員を間に入れて、『親族関係調整調停』をすることもできます。調停は、当事者同士が直接顔を合わせることなく、交互に話を聴く形でまとめられることが多いです。正式に『今後、一切つきまとい等をしない』などと調停調書を作成できれば、法的に強い効力があります」(佐藤さん)
そんなことをするのは面倒だから、家族の前から忽然と姿を消してしまいたいという人もいるだろう。しかし、残された家族が警察に「捜索願」を出せば、元も子もない。
「それ相当の理由があれば、警察に『捜索願不受理届』を出すことができるんです。それさえ出しておけば、捜索願が出ても警察は動かない上に、警察から“捜索願が出たが、親族にどう説明すればいいか”という連絡までくるのです」(ベリーベスト法律事務所・川崎オフィスの金井啓弁護士)