家族について、多かれ少なかれ、悩みを抱えていない人はいないだろう。世間には、家族がらみの凄惨な事件のニュースが溢れている。多くの場合、家族は「最大の味方」だが、近すぎる関係だからこそ感情がもつれにもつれ、「最悪の敵」にもなりえる存在だ。いっそのこと、そんな家族と「絶縁」してしまう方法はないのだろうか──。
《父が、私たち家族に一切関わりませんように》
《息子が早く家を出ていきますよう、お願いします》
《義母が一刻も早く死にますように》
京都にある由緒ある神社。ここは「縁切り神社」として知られ、家族への憎悪と怨念が書かれた絵馬が、ところせましと並んでいる──。家族とは、「大事なもの」であると同時に、「厄介なもの」でもある。嫁姑の不和は言わずもがな、相続や介護でも親きょうだいは揉めがちだし、最近は「毒親」もいれば、「パラサイト息子」もいる。今や虐待やDVは深刻な社会問題で、警察統計をみると、殺人事件の約半数は、親と子を含む親族の間で起きている。
昨年、元農水省事務次官の熊沢英昭被告(76才)がひきこもり状態だった44才の長男を殺害した事件が大きな話題になった。長男は中学生の頃から両親に暴力を振るってきたという。事件当日、「頭を家具などにたたきつけられ、殺されると思った」と言う元次官は、台所で包丁を握りしめ、息子に向かっていった。家族関係や子供の権利に詳しい弁護士の佐藤みのりさんが話す。
「関係が近いからこそ、家族は支え合える一方で、トラブルが起きがちで、強い憎しみの対象にもなります。家族関係が限界を迎えて、事件が起きてしまう前に、距離を置くことで穏便に済むケースは少なからずあるはずです」