北村氏によれば、政府は来年4月をめどに、受給開始を75才まで繰り下げられるようにするとみられる。もし、国の言うとおりに75才からの受給を選べば、国民年金の満額は通常なら年約78万円のところ、年約111万円にまでアップする。たしかに、その数字だけを見れば“繰り下げすればするほどバラ色の年金生活が待っている”かのように映る。
そのうえ、最近はいわゆる「老後資金2000万円」問題もあって、国民は自助努力で老後のお金を準備すべきだという風潮が高まっている。だから、“がまんして受給開始を遅らせて、少しでも年金を増やそうかな”と考える人が増えて、少しずつ繰り下げ受給者が増えているのだ。しかし、北村さんはこの現象にも警鐘を鳴らす。
「よく考えてみてください。年金財政を立て直したい、国民にできるだけ年金を払いたくないとばかり考えている政府が、本当に国民にとってお得な制度を、わざわざお金をかけてパンフレットを用意してまで勧めるでしょうか。繰り下げすればするほど、それだけ受給を開始する前に亡くなって、年金を受け取れない確率が増えます。現役時代に保険料を払うだけ払ってまったく受け取れないのは、確実に大損です。
また、受給額のベースの水準は毎年減らされているので、できるだけ“後ろ倒し”で年金を受け取ってもらいたい、という政府の狙いが透けて見えるのです」
※女性セブン2020年2月6日号