労働問題において、信じがたいニュースが昨年末に持ち上がった。大手コンビニのセブン-イレブン・ジャパンが、全国各地のアルバイトやパート従業員に残業代の一部を支払っていなかったと、謝罪会見を開いたのだ。
データが残っている2012年3月以降の未払い合計額は、3万人のアルバイトに対し、約4億9000万円。1人あたりにすると1万6000円程度ではあるが、身を削って働いているわれわれにとっては、サービス残業など論外だ。
「残業代の未払いはいつの時代も横行していましたが、現代は働き方が多様化したことにより複雑さが増し、労働法を正しく理解できていない経営者も増えている。受け身でいるばかりでなく、労働者自身も自衛していかなければ損をするだけです」(労働運動家の河添誠さん)
他にも労働をめぐる悪質なケースでは、本人が知らぬ間に「個人事業主」にされていたということもある。一般的なアルバイトやパートであれば、労働基準法が適用され残業代や通勤手当のほか、社会保険や雇用保険などの社会保障を受けられるが、個人事業主はこうした保障が一切ない。
「過去に、ある縫製工場で、働く女性の全員が個人事業主とされ、『業務委託』契約を結ばされていたことがありました。それにもかかわらず、働いている人たちは出退勤の時間が定められており、一般雇用労働者と同じ“指揮命令”による働きをしていた。しかし通勤手当も残業代も出なかったのです」(河添さん)
テレビ業界など専門的な職種では、時間に融通がきくことのメリットの大きさから、進んで業務委託契約が結ばれることも多い。しかし、その状況が常態化していることを問題視する声もある。労働法に詳しい渋谷共同法律事務所の萩尾健太弁護士が指摘する。
「出勤や退勤時間が定められていて、仕事内容が上司の指示に従わなければいけないなど、実態として“雇用労働者と同等”であるとみなされた場合は労働基準法の保護を受けられなければおかしい」
今一度、契約書を見直し、自分の雇用形態を確認した方がいいだろう。
※女性セブン2020年2月6日号