田代尚機のチャイナ・リサーチ

新型コロナによる金融市場の混乱、抑え込みにかかる中国当局の対応

WHOのテドロス事務局長と会見した習近平国家主席(Getty Images)

 上海総合指数は春節休場明けの2月3日、▲7.7%の下落となったものの、4日は1.3%上昇しており、一旦下げ止まった格好に見える。

 中国の金融当局、金融業界は“市場を安定させる”といった重責を担っている。中国人民銀行、財政部、銀行保険業監督管理委員会、証券監督管理委員会、外貨管理局は連名で1月31日、“新型コロナウイルス感染肺炎による疾病状況を金融面から予防しコントロールするためのサポートをさらに一歩強化することに関する通知”を発表した。

 合理的に余裕のある流動性を確保すること、金融インフラ設備の安全を保障し、金融市場の安定的で秩序ある取引を維持することなど5項目、30条からなる政策方針が示された。

 第1条では、中国人民銀行は引き続き市場の期待を誘導し、公開市場操作、常備貸借ファシリティ(SLF:Standing Lending Facility)、リファイナンス、手形割引など多様な金融政策ツールを駆使して、十分な流動性を提供するとしている。

 中国人民銀行はこの通知に従い3日、公開市場操作で7日、14日後買戻し条件付きのリバースレポ取引の金利を引き下げるともに、実質的に1兆2000億元の資金供給を行った。

 一部の証券会社は3日、空売り業務を停止した。急落により多額の追証(追加証拠金)が発生するのは明らかであり、強制決済による市場への悪影響を考慮した措置とみられる。“市場を安定させる”といった方針に従った措置であろうが、当局がこのような政策方針を示している以上、ファンドの運用者は需給に関係なく、売りにくい。先物市場では売り崩しなど、できるはずがない。証券のディーリング部門には暗黙の買い圧力がかかる。

 中国人民銀行はホームページを通じて、“新型肺炎流行による中国経済に与える影響は一時的なものであり、中国経済が長期的に上向いているといった基本的な面に変化はない”と強調している。本土のマスコミ情報をみる限り、各証券会社、運用会社の見通しなどもほぼすべて同じような基調である。投資家が必要以上に悲観的になり、株価形成が過度に不安定にならないよう業界全体で“投資家教育”に励んでいる。

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