小池百合子・東京都知事と森喜朗・東京五輪組織委員会会長は「五輪のレガシーを残す」と繰り返すが、過去の五輪開催地では閉幕後、施設が廃墟化したケースもある。東京の「大会後」がどうなるのか、注視しなければならない。
リオ五輪(2016年開催)のメーン会場として900億円をかけて建設されたオリンピック・パークの競技施設は、開催後半年も経たずに閉鎖され、いまや産業ゴミがあちこちに散乱して廃墟となっている。開会式が行なわれた「マラカナンスタジアム」も同様だ。
北京(2008年開催)でも、バレーボール会場の体育館は補修されないまま錆に覆われ、カヌー・スラローム競技の会場は水が抜かれて放置されている。巨費を投じ建設しても、その後の管理・維持費が賄えなかったためだ。
東京にも五輪の“負のレガシー”が残されることになりかねない。その筆頭候補が、1569億円を投じて完成した新国立競技場だ。年間の維持費はなんと24億円と試算されている。
施設を管理する「日本スポーツ振興センター」(JSC)は五輪後、運営権を民間に売却する方針だが、高額の維持費用がかかるとあって、売却の目処は全く立っていない。運営権の買い手がつかなければどうなるのか。JSC広報室の説明だ。
「大規模改修費などを含め、今後50年間で必要になる総コストは1200億円と試算しています。運営権を取得する民間事業者が現われなければ、年間24億円のコストはJSCが負担することになると思います」