業績拡大を続ける店と停滞する店は何が違うのか。居酒屋チェーンで明暗が分かれたのが、「鶏肉」を売りにする2店である。店舗数の伸びが目立つのが、ワタミグループが運営する「和民」や「わたみん家」などの総合居酒屋を衣替えした「ミライザカ」だ。
唐揚げを主力商品に置く同店は、若鶏のモモを丸ごと一本揚げた「骨付モモ一本グローブ揚げ」(税抜999円)と格安のハイボール(同199円)を武器に、2016年6月に1号店が開店。わずか3年半で208店舗に急成長(2020年2月現在)した。
「前は会社帰りに同僚と『和民』に通っていたけど、酒と料理で1人3500円くらいかかった。『ミライザカ』なら2000円でもおつりがくる」(50代会社員)
同店の躍進を受けて、経営するワタミグループ全体の業績も好調に推移。2019年3月期決算では営業利益が前年比61.8%増の10億6000万円となった。
苦戦を強いられているのが「鳥貴族」だ。焼き鳥を主力商品とする同店は、「ドリンク含めた全品280円(税抜)均一」(現在は298円)を前面に出して、売上高、店舗数ともに拡大を続けてきたが、2019年7月期決算では最終損益3億5600万円の赤字を計上。通期の最終赤字は2014年の上場以来初のことだ。
居酒屋チェーン事情に詳しい経営戦略コンサルタントの鈴木貴博氏が語る。
「どちらも“鶏肉メインで低価格”という共通点を持ちますが、鳥貴族の売りである『均一価格』が足を引っ張ってしまった印象です。全メニューを均一価格にしたことで、ミライザカの『199円ハイボール』のような目玉商品の提供ができなくなってしまった。2017年に298円に値上げしたときも、『全商品一斉値上げ』のイメージだけが強く残った。
消費増税もあり、最近の消費者は価格に敏感です。1本1000円近いグローブ揚げがあっても、ハイボールの199円という数字のインパクトが頭に残る。柔軟な値段設定が可能なミライザカが、今のニーズに合致しているといえるでしょう」
※週刊ポスト2020年2月28日・3月6日号