まもなく3月。企業は決算のピークを迎えるが、個人もこの年度末に「資産の棚卸し」をすべきだというのは、ファイナンシャル・プランナーの清水斐氏だ。「家計管理のためには、家計簿をつけるよりも負担が少ない」という。清水氏が“家計のバランスシート”の作り方を解説する。
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「今年こそは!」と1月から家計簿をつけ始めた人も、そろそろ挫折したり記入し忘れていたりする時期になりました。最近は家計簿アプリの登場で便利にはなりましたが、それでも毎日のこととなると、続かないという声が非常に多く聞かれます。
そこでこの時期におすすめしたいのが、「資産の棚卸し」です。これは家計簿と違って、年に一度、半年に一度行えば十分。企業も決算の際などに持っている現金や資産、在庫などを記録する「貸借対照表(バランスシート)」を作成しますが、それを個人で作るのです。家族が持っている複数の金融機関にある預貯金や、保険や投資信託、不動産など、持っている資産を一覧にして記録しておく作業です。
といっても、難しく考える必要はありません。パソコンでエクセルなどを使って、資産などを記入していくだけです。
具体的な作り方を見ていきましょう。図の例のように、まず夫婦それぞれの預貯金、株などの有価証券、不動産の価値、保険などの資産を洗い出していきます。表の左側が「資産の部」で、ご家族の場合、誰の名義でどんな種類の資産が、いくら分あるのか、普段バラバラに管理しているものを書き出していきます。
資産であれば、子供用を含めて複数の預貯金用口座、有価証券(株式や投資信託)の口座、債券、不動産、確定拠出年金(iDeCoや企業型DC)、保険、人によってはビットコインなどの仮想通貨を持っているケースもあるでしょう。それらを「思いつく限り全て」書いてください。
不動産は現在価値がわかればその金額を、分からなければ毎年6月に受け取る固定資産税の納税通知書にある評価額を記入します。保険については貯蓄性のものはその時点の解約返戻金を「契約状況のお知らせ」などに記載している数字を転記するなどします。
右側は「負債の部」です。こちらも住宅ローンや奨学金・車のローンやキャッシングまで思いつく限り全て記入してください。図の例では預貯金が3人(夫と妻、子)の合計で538万円あること、有価証券として402万7000円分持っている──といった資産の状況が左半分に記入しています。また、住宅ローン(残高)の1500万円は「負債」として右半分に記入されています。
そして、「資産の部」から「負債の部」を引いたものが「純資産」となります。多額の住宅ローンが残っているのに不動産の価値が購入時より目減りしてしまっているなどで「負債の部」のほうが「資産の部」として大きければ、「純負債」がある状態となります。