1月下旬、三菱電機が海外からサイバー攻撃を受けて、従業員など約8000人分の個人情報が流出したことがわかった。ITジャーナリストの三上洋さんは、「ここ数年で最も衝撃的なセキュリティー被害です」と指摘する。
「社員の個人情報だけでなく、研究開発中の防衛装備品に関する機密情報まで外部に漏れた疑いがあります。日本の国防を担い、『日本最強』と目される三菱電機のセキュリティーが突破されたインパクトはかなりのものです」
サイバー攻撃を仕掛けたのは、「Tick」と呼ばれる中国系のハッカー集団など複数のグループとみられる。
「2008年頃から活動を始めた彼らはアジアの企業や政府組織を標的にしている。ほかの国も諜報活動は行いますが、特に中国や北朝鮮、ロシアは国ぐるみで他国の機密や政治家、官公庁の情報を盗もうと躍起になっています。国ぐるみのハッカー集団は潤沢な予算があり、普通の会社員のように(午前)9時~(午後)5時で勤務しているようです」(三上さん)
専門家は「今回の事件は氷山の一角」と口を揃える。国際ジャーナリストの山田敏弘さんが指摘する。
「今回の件は朝日新聞のスクープで明らかになりましたが、サイバー攻撃を受けた企業は株価の下落や信用問題を恐れて、当局には報告するものの一般には公表しないケースが多い。私が取材した海外のサイバーセキュリティー関係者は、“三菱電機のような日本を代表する大企業は、軒並みサイバー攻撃を受けているはず”と口々に指摘します」