外食チェーンの風雲児の失速が止まらない。「いきなり!ステーキ」を運営するペッパーフードサービスが、2020年度中に74店を閉店すると発表した。
立ち食い形式で本格的なステーキを提供し人気となった同チェーンは、最大490店舗まで急成長を遂げた。しかし、昨年12月決算で2年連続で赤字となり、店舗拡大に陰りが見え始めていた。
いきなり!ステーキのような集中出店には「知名度向上」「経営効率化」などメリットも多い一方、リスクもある。調達アナリストで、いきなり!ステーキのゴールド会員(同チェーンでステーキを3000g~1万9999g食べた人)の坂口孝則氏が言う。
「チェーンの出店には『600店舗の壁』と呼ばれる現象があります。600店舗を窺うほどに急拡大すると、同じチェーンの店舗同士で客を食い合ってしまう」
その壁を超えて800店舗を超える頃からコンビニなどのようにチェーン店として定着するが、その手前で業績が悪化するなら規模縮小が必要になるといわれる。
この「600店舗の壁」には、過去にも多くの人気チェーンが悩まされた。
居酒屋「和民」「坐・和民」などを経営するワタミグループは、2014年に系列全店で最大約650店舗を誇ったが、499店舗まで落ち込んだ(2019年11月時点)。全品298円均一がウリの居酒屋「鳥貴族」も2018年11月に679店舗となって以降、緩やかに減少中だ(今年2月末時点で641店舗)。
前出・坂口氏は、いきなり!ステーキの復活には“原点回帰”が大切だと指摘する。
「いきなり!ステーキの魅力は、ステーキの標準が300グラムというボリュームとおいしさにある。ファンは多く決してニーズは落ちていない。安易に価格競争に走らず、不採算店舗の見直しなどで対応してほしい。拡大路線を止めたのは正解だと思います」
業績回復は“いきなり”とはいかなそうだ。
※週刊ポスト2020年3月20日号