新型コロナウイルスの感染拡大で、世界経済が大きなダメージを受けている。今後の収束懸念も不透明な中で、不況にあえぐ日本経済が回復していくにはどうすればよいのか。経営コンサルタントの大前研一氏が考察する。
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「中国がくしゃみをすると、世界が風邪をひく」と言われている。それほど中国経済が世界経済に及ぼす影響は大きいわけだが、新型コロナウイルス禍で中国経済が“肺炎”になった今、世界経済が大きく減速することは避けられないだろう。
とりわけ、昨年秋以降の景気腰折れが鮮明になった日本の状況はシリアスだ。
内閣府が公表した昨年10~12月期のGDP(国内総生産)1次速報によると、物価の変動を除いた実質(季節調整値)で前期(7~9月期)より1.6%(年率換算で6.3%)減り、5四半期ぶりのマイナス成長となった。10月からの消費税増税に台風被害や暖冬などが重なり、個人消費が落ち込んだことが大きく影響。さらに、企業の設備投資や住宅投資など、内需が総崩れになった。
もともと日本経済には好材料がない。これから伸びる可能性がある分野は、ほとんど見当たらないのだ。その最大の理由は人口と収入の減少である。日本の人口は年々減少し、名目賃金は20年以上にわたって上がっていない。さらに、かねて私が指摘してきた世界でも類を見ない日本の「低欲望社会」が、内需の低迷に拍車をかけている。
だが、逆に考えれば、今は旧態依然の日本をオールクリアして再生するチャンスだ。繁栄している他の国を見習い、岩盤規制を緩和・撤廃すればよいのである。
たとえば、ガソリンスタンドは敷地内にコンビニや物流拠点を設置したり、次世代自動車向けの電気や水素を供給したりすることは、消防法によって厳しく規制されている。この規制が緩和されれば(すでに経済産業省は検討中だが)ガソリンスタンドにも生き残りの道が開けてくる。
また、ドラッグストアや薬局は、規制緩和によって可能性が大きく広がる。
世界的に見れば、薬の処方箋は電子化が当たり前になっている。つまり、医者が患者に処方箋を電子的に送り、それを患者はスマホやサーバーに保存して最寄りの調剤薬局で提示したり、事前に転送したりするのだ。そうすれば、患者は調剤薬局での待ち時間が大幅に短くなるし、配達までしてもらえたら外出も減るので、感染症対策にもなるだろう。