低空飛行が続く日本経済。その本質的な問題解決のためには、どこに注目すればよいのか。経営コンサルタントの大前研一氏が解説する。
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2020年の世界経済は、アメリカとイランの対立で中東情勢が極度に緊迫し、波乱の幕開けとなった。
一方、安倍晋三政権は昨年12月、台風被害の復旧・復興や景気下振れリスクに対応するという名目の26兆円規模の新たな経済対策と、8年連続で過去最大を更新する一般会計総額102兆6580億円の2020年度予算案を決定した。まさに大盤振る舞いである。
安倍政権は「アベノミクス」「3本の矢・新3本の矢」「1億総活躍社会」といったキャッチフレーズと経済対策や予算の数字を乱発して体面をよく見せかけようとしているが、実際はどれも全く機能せず、日本経済は低空飛行を続けている。なぜなら、どの政策も本質的な問題解決に取り組んでいないからである。
本質的な問題とは何か? 「円安」である。日本の財界は、未だに加工貿易立国全盛時代のメンタリティを捨てきれていない。たとえば、経団連の歴代会長は大半が新日本製鐵(現・日本製鉄)、東京芝浦電気(現・東芝)、トヨタ自動車、キヤノン、日立製作所などの輸出企業から選ばれてきた。このため、財界の人々は円高になると利益が減り、円安になればなるほど儲かるという図式が頭にこびりついている。
だが、日本のGDP(国内総生産)に占める貿易の割合は10~15%で、輸出から輸入を差し引いた純輸出は2%前後でしかない。したがって、為替レートが変動してもGDPに対する影響はほとんどないのである。
しかも、本連載で指摘してきたように、今やトヨタをはじめとする大手の輸出企業の多くは世界化して海外各地に工場を展開しているので、ほぼ“為替中立”になっている。つまり、たとえ円高で一時的に大きな為替ダメージを受けたとしても、半年もあれば調整できるのだ。だから、もはや「円高=悪」という考え方は捨て去るべきなのだ。自国通貨が弱くなって喜ぶ国は日本と韓国くらいである。