また、東南アジアではグラブやゴジェックなどのオンライン配車サービスが大流行だが、日本では自家用車に人を乗せて料金を取ることはできない。この規制を撤廃しないと、高齢化が進む地域では“移動難民”が大量発生することになる。
家政婦や育児支援に関しては、個人が外国人を雇用するための就労ビザがない。政治家は女性の社会的地位を向上すべきとか出生数を増やせとか言っているが、そもそも女性を家事や育児から解放する基本法がないのである。
このように、規制を撤廃すれば新しいビジネスのアイデアはいくらでも出てくるのだ。まさに「商い無限」である。一時的に失業者は増えるかもしれないが、今の日本の失業率は2.2%。事実上、完全雇用状態であり、規制撤廃で失業者が増えたら、その人たちを新しいビジネスに投入できる。
要は、私が30年前から提唱してきた通り、提供者の論理ではなく、生活者・消費者の視点で規制を撤廃して繁栄の道を探るしかないのだ。このまま座して待っていたら日本経済はジリ貧となり、いよいよ危機的な状況に直面するだろう。
●おおまえ・けんいち/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊は小学館新書『経済を読む力「2020年代」を生き抜く新常識』。ほかに『日本の論点』シリーズ等、著書多数。
※週刊ポスト2020年3月20日号