V字回復のシナリオ
「日本経済をV字回復させるには税率8%でも5%でもなく『「消費税ゼロ』しかない」と断言するのは内閣官房参与として安倍首相のブレーンを務めた藤井聡・京都大学大学院教授(社会工学)だ。
「感染の拡大が止まり、収束宣言が出されれば、間違いなく世界経済は急速に回復に向かう。しかし、日本だけは消費税10%で実質賃金が下がっているため、いまのままでは回復に乗り遅れてしまう。
そこで消費税を10%減税(税率0%)すれば、実質賃金が10%上がったのと同じですから、国民は感染の収束宣言と同時に我慢していた消費を思い切って増やし、日本経済は力強く回復に向かうはずです」
産経新聞特別記者兼編集委員の田村秀男氏もこう言う。
「いま必要なのは個人消費を促し、企業が生産や設備投資を増やすような対策です。国民にお金を配るだけでは一過性の効果しか生まないが、不況の元凶である消費税の税率を0%にすれば家計は10%分の負担軽減になり、効果は持続する。
消費税0%というと税収が減ることを心配する人もいるが、それは近視眼的な見方です。税率10%のままでは景気が悪化して消費税も所得税も法人税も税収が減っていく。逆に税率0%にしても消費が増え、景気が上向けば法人税や所得税の税収が増えていきます」
新型コロナの感染はいずれ収束に向かう。そのとき、期限付きで「消費税ゼロ」になれば、この間我慢していた分と、「税率が戻る前に買っておこう」という駆け込み需要が重なって消費が過熱し、日本経済はV字回復の道を辿るだろう。
リーマン・ショックの後、世界で最も回復が遅かったのは危機対応に失敗した日本だった。新興国は2年弱、米国は3年弱、欧州は4年弱で経済が回復したが、日本は消費がリーマン前の水準に回復するまでに5年、輸出数量が回復するまでにはなんと10年もかかった。
その責任を負うべき麻生太郎・財務相は、今回も「消費税を直ちにゼロにする発想はない」と税率0%論を完全否定している。安倍首相がこの人物の言を用いたら、あの失敗を再び繰り返し、国民の犠牲を増やすことになりかねない。
※週刊ポスト2020年4月3日号