新型コロナウイルスの感染拡大は一向に収束する気配が見られず、世界各地で渡航中止勧告や外出禁止令が実施されている。もしも海外の勤務先で日本人がウイルスに感染したら、日本の労災は適用されるのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
新型コロナ肺炎が収束しません。武漢の工場などで働いていた日本人労働者が感染した場合、労災が適用されるのか気になります。今後も世界のどこかで新しい感染症が発症するかわからず、その際、たまたまその地で仕事に従事(日本車製造の工場など)していた日本人に補償があるのか心配です。
【回答】
我が国の労災保険法は、日本国内の労働者に適用されます。そこで日本企業に雇用され、海外で働く労働者の事故は、海外出張者と海外派遣者に区別して扱われます。
厚労省のHPでは、前者は「単に労働の提供の場が海外にあるにすぎず、国内の事業場に所属し、その事業場の使用者の指揮に従って勤務する労働者」とされ、商談、市場調査、アフターサービス、トラブル対処、技術習得などで海外に出かける場合が例示されています。会社の出張命令で、こうした海外の仕事に従事する労働者は、労災法で保護されます。
一方、海外派遣者とは日本の会社から派遣され、「海外の事業場に所属して、その事業場の使用者の指揮に従って勤務する労働者またはその事業場の事業主」です。事業主とは、中小規模の海外子会社や支店へ使用者の立場で派遣される場合です。海外派遣者は、労災保険の特別加入手続を取ることで、労災法の適用を受けられます。