「食堂のおばちゃん」として知られる作家・山口恵以子さんが最愛の母・絢子さんとの「最期の日々」を綴った新著『いつでも母と』が話題になっている。七転八倒の介護を経て、山口さんは母を自宅で看取った。「本当に穏やかで幸せな最期だった」と山口さんが語るそれは、果たして誰もが享受できるものなのか。
厚労省「人生の最終段階における医療に関する意識調査」(平成30年3月)によると、「最後を迎えたい場所は?」という質問に対し、最も多かったのは「自宅」の69.2%、以下「医療機関」(18.8%)、「無回答」(10.5%)、「介護施設」(1.4%)と続く。一方、2017年の人口動態統計によると、実際に亡くなる場所でもっとも多いのは「病院」の73.0%で「自宅」は次いで多く13.2%となっている。希望と現実には大きな差があるのだ。
山口さんが、絢子さんの主治医で「しろひげ在宅診療所」院長の山中光茂さんと、自宅で最期を迎えることの光と影について語り合った。
山口:私は当初、山中先生が年間200人ものかたの看取りをされていることを知りませんでした。昨年、ご近所のお宅もやはり先生にお世話になってご主人を自宅で看取られたと聞き、在宅での看取りが増えているのを実感しています。
山中:実は、在宅での看取り自体はそれほど増えているとはいえない現状があります。在宅医療のクリニックや介護施設は近年かなり増えて、在宅医療を受けていらっしゃるかたは増えていますが、自宅での看取り率は13%ほど。「最期は自宅で」と望む人の多さに比べて、医療が対応できていない現実があります。