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69%が望むが現実は13%…「最期は自宅で」の思いを阻む壁

最期を迎えたい場所は?(厚労省「人生の最終段階における医療に関する意識調査」平成30年3月より)

最期を迎えたい場所は?(厚労省「人生の最終段階における医療に関する意識調査」平成30年3月より)

山口:およそ7割のかたが在宅での看取りを希望していらっしゃるというデータがありますよね。山中先生のご多忙ぶりを見て、てっきり増えているんだとばかり思っていました。

山中:いくつか理由がありますが、1つは、多くの在宅診療所が「24時間対応」を掲げていますが、実質的にそうなっていないこと。私の感覚的には9割以上の在宅診療所が、土日や夜間はコールセンターで対応しています。

 コールセンターにいる医師は、普段診てくれているかかりつけの医師ではなく、夜間アルバイトの医師や看護師。彼らは、その患者さんやご家族の思いを知りません。電話口でパニックになった患者さんに対応しきれずに、救急車を呼ぶことになります。その結果、総合病院に救急搬送されて、そのまま亡くなるかたや、望まない延命治療をされるかたは少なくないんです。

山口:そんなことがあるんですね…驚きました。それでは確かに24時間対応とは呼べませんね。

山中:そう、24時間電話は受けます、というだけ。いくつもの診療所を経営する、ある有名な医療法人は、都心に1か所だけコールセンターを設けて、そこに医師を2人置いて、そこですべて対応しています。

 でも、例えば山口さんの住む江戸川区のかたが急変して深夜に電話しても、場所も遠いし、行くのも大変ですよね。何より責任を取りたくないから、「救急搬送しておけば」となるんです。救急対応と在宅医療とは全く意味が異なります。だから在宅医を選ぶときは、夜間対応のあり方をきちんと診療所に聞いて、見極めてほしいと思います。

急変した時に119番に電話してしまったら

山口:初めて山中先生がうちに来てくださったときは別の機関にお勤めでしたよね。そこをお辞めになったら、先生がいまおっしゃったようなバイトのお医者さんが母の担当になって…。私は先生を信頼していたから、新しく開設した診療所で継続して診てもらったんです。

山中:多くの在宅診療所が大学からの週1回のバイト医師を使って日常の訪問診療をさせることが多いんです。私はそんな体制が嫌で、夜間は自分が全部責任を持って担当すると言ったんですが、ダメだということになりました。

 新しいクリニックはゼロからのスタートでしたが、1年経って、いまは500人の重症度の高いかたを中心に診ています。正直、最初からいままで昼も夜もすべてひとりで往診の責任を負ってきました。最近やっと任せられる常勤の医師が育ってきたので、少しずつ責任の分担をしてもらおうと思っています。

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