コロナ禍で国内外の往来が途絶えても、営業を止めることは考えていないというアパホテル。創業オーナーでアパグループ代表の元谷外志雄氏に、今の経営戦略を聞いた。
──コロナショックはとりわけ観光業界を直撃している。アパホテルは拡大に次ぐ拡大でこの3月にネットワーク総客室数が10万室の大台を突破しました。突然の大逆風で窮地なのでは?
元谷:確かに打撃は大きい。地域や立地によっては現在も客室稼働率が80%から100%近いところもありますが、全国的に見れば約50%にまで落ち込んでしまいました。一時は45%まで落ち、最近は少し持ち直しましたが、いずれにしろこの稼働率では赤字です。
日本よりさらに厳しいのは海外、特に4年前に買収した北米のコーストホテルグループですね。カナダとアメリカで計39ホテルを展開していますが、両国間の往来が全面禁止になったことで、カナダのホテルチェーンのほとんどは休業している。でも、私は「全面休業はするな。ワンフロアだけでもいいから開けろ」と指示しました。
稼働率は1割にも満たず、ワンフロアも要らない状況ですが、ヒルトンやリッツカールトンなど、世界に根を張るメガホテルチェーンはそれでもオープンしている。
「彼らが開けている間は、赤字でかまわないから営業し続けろ」と指示しています。理由は「ブランド力」を世界に示すため。いま優先すべきことは、赤字回避よりも、自社のブランドを毀損させないことなのです。
アパホテルは東日本大震災の直後も1軒もクローズしなかった。
「一日たりとも休んではいけない。予約がない人も、ウチのホテルに避難する目的であれば受け入れなさい」と話しました。ホテル内にある毛布やベッド、それに食料品をすべて避難された方に提供したことで後々、大きな感謝をいただいた。ひいてはアパホテルのブランド力アップにつながりました。
非常時にも冷静であり続け、普段通りを貫けるかどうかが何より重要なのです。