──しかし、この出口が見えない不況の中で続けるのは難しいのでは?
元谷:アパホテルには、赤字でも持ちこたえる十分な体力があります。昨年の決算(2019年11月期)は、売上高が1371億円で営業利益が359億円。毎年、コンスタントに350億円前後の利益を出していますし、創業以来、一度も赤字を出してない。借入金が2000億円から3000億円ぐらいなのに対し、資産は1兆円以上ある。1年や2年、現在のような逆風が続いてもびくともしません。
いまの厳しい環境は、むしろ当社にとっては設備投資のチャンスです。現在は超低金利ですし、少々割高でも1万室クラスのホテルチェーンを買収する余力がある。メインバンクには「いい出物があればいつでも買う用意がある」と話をしています。
景気が順風の時はどのホテル会社も追い風なので、雨後の筍のように新しいホテルを建てる。ところが景気が悪化すると一転して経営が傾くホテルが現われる。百花繚乱期から寡占化のステージに入っていくんです。
当社の目標は、その寡占化に一番乗りすること。具体的には、客室数の市場占有率で20%を取ることです。
当社は今年3月に10万室に到達しましたが、それでもまだ10%に届いていない。並み居る同業他社の倍以上の利益を出している強みを背景に、拡大路線をまだまだ続けていきます。
【PROFILE】もとや・としお/1943年、石川県生まれ。1971年、信金開発(現アパグループ)を創業。1984年にホテル事業を開始し、日本最大のホテルネットワークに成長させた。
●聞き手/河野圭祐
※週刊ポスト2020年4月17日号