新型コロナウイルスの影響で景況感が急激に悪化している。「景気は気から」ともいわれるが、感染拡大の不安が広がる現状はまさに消費マインドが急速に冷え込んでいるといえる。こうした現状を示す身近な経済データを、三井住友DSアセットマネジメントのチーフエコノミスト宅森昭吉氏に紹介してもらった。
まずは、3月に史上初の無観客開催として実施された大相撲春場所を見てみよう。勝負を制した力士に企業から贈られる懸賞本数は景気と相関する傾向があるが、事前の申し込みがあった74社中、39社が取りやめた(その後数社が戻ったという)。
「優勝した横綱・白鵬に懸けられた懸賞がわずか1本という日もあったうえ、横綱同士の相星決戦となった千秋楽の結びの一番でも27本と、寂しい数字となりました」(宅森氏)
場所を通しては、地方場所として過去最高となった前年同場所の1938本から44.9%減となる1068本とほぼ半減となり、力士の懐にも非常に厳しい結果となった。
同様に無観客レースを開催した中央競馬は、新型コロナウイルスの影響が出るまでは前年比2%台のプラスを維持していたことからみて基調は底堅かったのだが、年初から3月末までの入場者数は前年同期比で40.4%の大幅減、売得金もマイナス5%という厳しい数字に転じてしまった。初の無観客GIレースとなった高松宮記念(中京競馬)の売得金は前年比0.4%とわずかながら増加したが、これは同じ日に中山競馬が降雪で3レース以降中止になったことが影響していると見られ、明るい要素とは言えなさそうだ。
さまざまな景気指標が悪化する中で、宅森氏が特に懸念するのは3月の日銀短観の中小企業・非製造企業の業況判断DIだ。2015年3月調査以来、5年間マイナスにならなかったこの指標がついにマイナスに転じた。
「非製造業はサービス業が含まれており、雇用吸収力が大きい領域です。ここがマイナスになったことで、先行きの雇用の悪化が懸念されます」(宅森氏)