総務省統計局「国勢調査」によれば、2015年の単独世帯は全体の約35%。2040年には40%に達すると予想されている。2~3人に1人がひとり暮らしなら当然、誰にも看取られずにひとりで死ぬ“孤独死”も増える。孤独死とは、いったいどんなものなのか。
人が亡くなり、遺体がしばらく見つけられなければ、腐敗が進む。そうした部屋の清掃は、特別な技術や知識が必要になる。そこで、孤独死などがあった現場の清掃は、一般に「特殊清掃」と呼ばれる。清掃会社『まごのて』代表取締役の佐々木久史さんはこう語る。
「当社では年間約1000件以上の清掃業務を行っています。特殊清掃を始めた当初は年間で数十件ほどの依頼でしたが、いまは業務全体の約2割が孤独死の案件です。孤独死が増えていることを実感しています」
東京都監察医務院の調査によると、東京23区内で、65才以上のひとり暮らしの高齢者が自宅で亡くなったケースは、2002年が1364件だったのに対し、2019年は3882件と、約3倍にも増加している。ひとりのときに自宅で死ぬことの大きな問題は、遺体の発見が遅れる点にある。日が経つほど腐敗が進むからだ。
「孤独死されたかたの部屋は、バケツで泥水をぶちまけたような状態になっています。遺体から染み出た粘液状の体液が、遺体があった場所だけでなく、周りの床や畳などに広がっていくからです」(佐々木さん・以下同)
夏場なら、3日もすれば部屋が体液浸しになるという。
「こうなると、とにかく腐乱臭がすごいんです。脳が受け入れることを拒否するような強烈な刺激臭で、何度現場を踏んでも慣れません。ハエや蛆虫も部屋中にわいていて、特にハエは体液を足につけたまま部屋中を飛び回る。そのせいで、あちこちににおいがこびりつき、汚れやにおいがますます取りづらくなります」