休業や失業で収入が激減し、失業者が街にあふれる可能性は高い。そうなると、自殺者の増加も懸念されるという。片田さんが続ける。
「テレワークや休業で一日中夫婦が顔を突き合わせているとストレスがたまり、やがて怒りに変わります。ウイルスや政府に怒りを直接ぶつけることはできないので、いつしか矛先が家族に向かう。すると、虐待やDVが増加します。阪神・淡路大震災や東日本大震災後は、こうした社会不安やストレスによるDVが増加しました。人は、受け入れがたいほどのストレスにさらされると、“どうして自分がこんな思いをしなければならないんだ”と怒りを感じ、次第に“他人を道連れにしてやる”などと、八つ当たりするようになるのです」
すると今後も、愛知県蒲郡市の「コロナばらまき男」のように、復讐願望から攻撃的な行動に出る者や、「新型コロナウイルスはお湯で死ぬ」といったデマを流してうっぷんを晴らそうとする者が次々と出てくる。
著書『サピエンス全史』で人類発展の歴史をひもといたイスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏は、日本経済新聞にこんな寄稿をしている。
《新型コロナの嵐はやがて去り、人類は存続し、私たちの大部分もなお生きているだろう。だが、私たちはこれまでとは違う世界に暮らすことになる》──
日常を失いつつあるのは日本だけではない。世界中で感染拡大を続ける人類最大の危機をどうにか乗り切れたとしても、その先の“コロナ後”の世界は、明るいとは言い切れないかもしれない。
※女性セブン2020年4月23日号