4月7日、安倍晋三首相は「緊急事態宣言」を発令、日本政府が、ようやく重い腰を上げた。「欧米のようなロックダウン(都市封鎖)が行われることはなく、これまでどおりだ」と言うが、われわれの日常はすでに様変わりしている。多くの人が早く“コロナ前”の暮らしに戻りたいと願っているが、危機が去ったとき、本当に“元の暮らし”は戻ってくるのだろうか。
そもそも新型コロナウイルスの発生源とされるのは、中国の武漢だ。当初は爆発的に感染拡大したものの、習近平国家主席はヒト間の感染が確認された1月20日から3日で武漢を封鎖。すべての公共交通機関をストップさせた。翌24日には新たに感染者用の病院の建設を始め、わずか10日で完成。この迅速かつ強権的な対策により、現在は感染者数の増加に歯止めがかかり、工場や商店の営業再開も報じられるなど、世界に先立って回復に向かっているという。
2月には、現在も感染拡大が続くイタリアなどヨーロッパ諸国にマスクや人工呼吸器などの医療物資約30トンを贈る“余裕”を見せた。共産党の一党独裁体制だからこそなせる業だといわざるを得ないが、問題はその「回復の仕方」にある。
東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授の篠田英朗さんが話す。
「ウイルスの発生源といわれている中国が、国家権力を駆使した強権的なやり方で、瞬く間に回復した。一方で、自由主義国家であるアメリカとヨーロッパは、いまだ感染拡大が続いている。アメリカのトランプ大統領が新型コロナウイルスを“中国ウイルス”と発言するなど、中国へのいら立ちを募らせたこともあった。
発生源かつ社会主義国である中国に屈服したくないというプライドはあっても、結果的に自分たちはウイルスを抑え込めていない。それがおもしろくないのでしょう。欧米諸国からすれば、いまの中国のやっていることは、火事場泥棒が人助けをしているようなものなのです」