新型コロナウイルスの猛威が、欧米を襲っている。米国、イタリアは2万人超、スペイン、フランスも1万人を超える死者が出ており、その数はまだまだ増え続けている。その一方、発生源とされる中国・武漢は強権を発動して都市閉鎖を行い、共産党の力を使って病院を10日間で作るなどし、“抑え込み”に成功したと誇示している。中国人看護師が次々と笑顔でマスクをはずしていく動画などもネットには公開されている。
では、新型コロナウイルスによって未曽有の危機に瀕した資本主義国家は、中国のような独裁的な権威主義に“方向転換”しなければならないのだろうか。東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授の篠田英朗さんはこう話す。
「従来の民主主義・資本主義では新型コロナウイルスの封じ込めに疑問が生じているのは事実です。しかし、今後世界が権威主義に向かっていくとは考えにくい。
というのも、人格はさておき、現在、アメリカでのトランプ大統領の支持率は上がってきているのです。そこにあるのは、“この危機を脱するためにトランプ氏に頑張ってもらわないと、みんな倒れてしまう。生き残るために、国民全員で支えていくしかない”という“戦時”の大統領への期待なんです。2001年の9.11テロ当時も、ブッシュ大統領の支持率が8割以上まで上昇しました。戦時中は支持率が上がる傾向が強いのです」
トランプ氏が大統領の座に就いている以上、“自由の国アメリカ”が揺らがないことは、誰の目にも明らかだ。
そして、日本がアメリカにつき従うというこれまでのあり方も変わらないだろう。
「日本国内では“お肉券の配布案”“各世帯にマスク2枚配布”といった頼りない政策に、国民の不満が高まりました。しかし不思議なことに、安倍首相に対する国民の思いは“なぜすぐに緊急事態宣言を出さなかったのか”“もっとはっきりした対策を取ってくれ”というもの。国家とリーダーに指導力を期待する流れになっているのです」(篠田さん)
安倍首相に対し「辞めちまえ」ではなく「しっかりしてくれ」と声を上げる私たちもまた、トランプ氏に“期待”するしかないアメリカ国民と同じということだ。
世界の情勢も人々の日常も大きく変わったが、リーダーは変わらない。では、私たちはどうすればいいのだろうか。