新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、非常事態宣言が発令されているが、日本経済のダメージをできるだけ小さくするためには、何が必要なのか。経営コンサルタントの大前研一氏が考察する。
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新型コロナウイルスのオーバーシュート(爆発的な感染拡大)を防ぐため、安倍晋三首相は東京など7都府県に緊急事態宣言(5月6日までを想定)を発令した(4月16日には新たに40道府県に対し発令)。感染者が増加している中では、被害の拡大阻止のために最大限の措置を取るべきなのは当然だが、その一方で日本経済の“基礎体力”が失われる事態は避けねばならない。
政府は、遅ればせながら事業規模108兆円の緊急経済対策も策定したが、あまりにも遅きに失している上、1世帯あたり30万円の現金給付(一定の収入減などの条件付き)や全世帯に「布マスク2枚」ずつ配布など、場当たり的な愚策の数々に批判が殺到している。
それに先立つ3月下旬、東京都の小池百合子知事は、週末の不要不急の外出と、平日も含めた夜間の外出を自粛するよう都民に要請した。さらに、カラオケ、ライブハウス、バー、ナイトクラブなどの具体的な業種を挙げて、それらの店へ行くことも自粛するように呼びかけた。しかし、そこまでやるならその前に対象となる店舗の売り上げを補償すると発表すべきだったろう。政府の経済対策が期待できない中で、これはただの営業妨害でしかない。
新型コロナは未知のウイルスなので、感染症の専門家や現場の医師も、どうすれば感染拡大を的確に防げるのか、まだ手探りの状態だ。とくに重症化するリスクが高い高齢者や基礎疾患を持っている人にとっては脅威である。だから、とにかく「危ない」と警鐘を鳴らし、不要不急の外出を控えることや、外出する際も「三つの密」(換気の悪い密閉空間、多数の人が集まる密集場所、間近で会話や発声をする密接場面)を避けることなど、現状で考えうる最大限の感染防止策を講じるよう求めているわけだ。