本来は3か月に及ぶ研修の後、現場に配属されて実地経験を積む予定だったものの、今後のスケジュールは未定。Aさんは、このままオンライン上での研修が続きそうな気配を感じている。
「心細さを感じさせないように、会社からとても気を遣われているのを感じます。でも一番大変なのは急ピッチで準備をした人事の皆さんや、リモート業務の合間にケアしてくれる先輩方だと思います。誰にも会わず社会人になり、会社のことも分からないまま、一度も出社せずに初任給をもらったので、不思議な気持ちです。でも、同期のなかからは、この状況がずっと続くようなら、社会での実践経験を求めて、オンラインで本来業務ができるIT関係の業種に転職するという声も出てきています」(Aさん)
新入社員の中に「不安」を感じている人は多い。食品会社に新卒入社した男性・Bさんが語る。
「私もですが、今後の経済や将来について不安を覚え、疑心暗鬼になっている人は多いです。大学の同期で、東京に本社がある大手サービス業に入社した友人は、コロナの影響で主力事業の市場規模が縮小していることから、1年目社員は、当初の部署では何もしないままごっそり配置転換されるかもしれない、という噂が流れ、戦々恐々としています。
特に地方大学出身者は、東京での知り合いも少ないことから特に心細い日々を過ごしているようで、LINEの同期グループで積極的にオンライン飲み会を呼びかけています」(Bさん)
都内のIT企業で人事担当部署に所属する30代の女性・Cさんは、今年の新卒社員受け入れの苦労を語る。
「ただでさえ、社会にまだ慣れていない新入社員は、こちらのちょっとした対応やコミュニケーションの齟齬で、簡単に不安を募らせてしまうものです。それがオンライン上ならなおのこと。そのため今年は例年以上に、研修を明るく行うための雰囲気作りに神経を使い、小まめな対話や個別の面談を増やして、新入社員の心のケアに時間を割いています。