このようにさまざまな原材料の確保が難しくなり、今後、加工食品を中心とした食品業界は窮地に立たされる可能性が高い。それだけに、今回の通知は“救済策”であるが、悪用する業者も生んでしまいかねない諸刃の剣だ。
食に対する不信感が募るばかりだが、垣田さんは「社内監視が厳しい企業は、ある程度リスクが低いと思います」と語る。
「食品メーカーにとって、信頼が大きく揺らぐ食品偽装は、会社が潰れかねない大騒動。企業もそんなリスクは負いたくありませんから、社内の不正には常に目を光らせています」
制度面でも追い風が吹く。今年6月、食品の品質管理に関して、新たな手法が義務化されるという。消費者庁の食品表示一元化検討会委員を務めたこともある薬学博士の中村幹雄さんが語る。
「従来は、最終的に出来上がった製品を検査して安全性を確認していました。今後は、原材料の受け入れから最終製品までの工程ごとにリスクを分析し、安全性を確保するHACCP(ハサップ)という制度が義務化される。現地の衛生状態など、厳しい検査をクリアしなければならないので、健康に害を及ぼす加工食品が蔓延するリスクは軽減されていくでしょう」
何より大事なのは消費者の意識だ。常にアンテナを張り、最新情報をチェックする。それが、家族の食卓を守る私たちに求められているのかもしれない。
※女性セブン2020年5月21・28日号