消費者庁の担当者が、「新型コロナウイルスの影響で、いつ外国産品の原材料の供給が止まってもおかしくない」と語る世界情勢。この状況を打破するために出された通知に賛否の声があがっている。
4月10日、消費者庁が「新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた食品表示法に基づく食品表示基準の弾力的運用について」と題した通知を出した。新型コロナの影響で原材料が不足し、別の産地のものを使わざるを得なくなっても、容器包装の成分表示を変更せずに販売してもよい、としたのだ。
表示を切り替えなくてもよいとされる対象は、基本的には【食品原材料】と【添加物】だ。しかし、やむを得ない場合は【原料原産地】【製造所の所在地】【加工所の所在地】【栄養成分の量】が変更されてもそのままの表示で許される。要は、国産だった原材料が輸入品に変わったとしても、表記は「国産」のままでOKということになる。
当然、今回の通知を悪用する違反に対して厳しく取り締まっていくことも併記しているが、悪用の定義は曖昧だ。この通知を悪用して、原材料や原産地を偽装される恐れがある。
消費者にとって心配なのは制度の悪用だけではない。食料が実際に不足する事態は、現実的なリスクでもある。というのも、新型コロナの影響によって、すでに、ロシアをはじめ13か国が自国の食料確保を優先するため、農作物や食品の輸出規制に乗り出している。また、各国が行っている移動禁止の措置によって労働者が不足し、農産物の生産量が激減する恐れもある。
日本がおもに小麦や大豆を輸入しているアメリカやオーストラリア、ブラジルなどは、現状、日本への輸出を続けており、政府も「備蓄は充分にある」と公表している。しかし、今後の情勢次第では、いつ輸出が滞ってもおかしくない。最近では、先行きに不安を覚えた消費者による買い占めで、小麦粉やホットケーキミックスが品薄になっている。