こうなると通勤手段は、徒歩、自転車、タクシー、自家用車などに絞られる。それもこれも世のため社員のためだが、本末転倒のような事態も起きている。
「タクシーで通勤しても経費で落ちますが、精算が面倒という理由から、出社する必要がある社員の多くはマイカー通勤。ガソリン代も駐車場代も会社持ちです。ただ、相乗りしている社員が結構います。車内は完全に“3密”ですよね。若手の社員の中には免許がない者もおり、上司が運転する車に相乗りして帰る姿を見かけます。正直“よく乗るなぁ”と、呆れるやら……。
ある会議では、どうしても関西支社の社員を呼び寄せる必要があり、新幹線が使えないので、車で往復したそうです。『車がない』と訴えた若手社員は、役員専用のハイヤーで自宅まで送り迎えされ、『二度と乗れないかも』と密かに喜んでいました。一方、一時的に社用車を貸与されたものの、車が大きすぎて駐車場に入らなかった社員もいました」
電車・バスがダメなら、まず思い浮かぶのは車。一方で、健康志向の者もいる。Aさんが続ける。
「私は自宅から50分ほどかけてオフィスまで歩いていますが、こんなのは序の口。週1回、1時間半かけて歩いて通っている社員もいますし、片道30km近くの道のりを自転車で来ている猛者もいます。バリバリのエリートイケメン外国人上司はママチャリで出勤して、ギャップ萌えなのか、好感度が大幅UPしていました」
外資系のエリートサラリーマンは概して健康意識が高く、不便な状況もポジティブに受け止めているのだとか。ただ、ストレスが溜まっているのは間違いない。
「社内では、『○○さんが電車に乗っていた』という“密告”が横行しています。安くない給料をもらっているのに、簡単なルールを守れない人間にも呆れますが、それを会社に告げ口する社員がいるなんて、本当に情けない……」
緊急事態宣言の延長で、公共交通機関使用禁止が延びるのは確実。いい加減、徒歩通勤にも飽きてきたAさんは、25年ぶりに原チャリに乗ろうか思案しているそうだ。