新型コロナウイルス感染予防として、政府は密閉、密集、密接の「3密」を避け、人と人との接触機会を8割減少するよう呼びかけている。そんななか、再評価されつつあるのが移動手段としてのマイカーと運転免許だ。
若者の車離れが叫ばれて久しいが、並行して免許取得も消極的になっている現実がある。ソニー損保によれば、2020年の新成人の免許保有率は56.4%。都市部に限ると実に約4割にとどまる。金銭面などの負担、何より都市部では“足”としての必要性の低さから敬遠されてきたが、コロナによって、そうした評価が変わりつつあるようだ。
免許を持たない30代のフリーランス男性・Aさんも、免許と車に憧れるようになった一人。東京出身で、これまで移動は基本的に電車で済ませてきた。Aさんの周囲も免許を取得している人は半数もいなかったといい、そのまま車に縁がない人生を歩むつもりだった。だが、4月に海外での仕事から帰国した成田空港でその認識は一変した。
「海外からの帰国者は、公共交通機関もタクシーも使用できないと言われて、唖然を通り越して笑ってしまいました。“この時代に、そんなことあるの?”って。レンタカーかマイカー、もしくは近くのホテルに泊まるのか迫られました。どうにか父親がレンタカーを借りてきて、空港まで迎えに来てくれ、難を逃れましたが……」
Aさんは、空港から東京方面へ向かう車内で、60代の父親から釘を刺すように言われた言葉が忘れられないと話す。
「『車離れだし、免許持っている人間も減っているのに、ひどくない?』と父親に愚痴をこぼすと、『何度も言っただろ。持っていれば役立つのが免許。使う・使わないで決めるのはよくない』と。何も言い返せませんでしたね。コスパばかりに捉われていた自分を恥じました。30代で遅いかもしれませんが、コロナ終息後には教習所に通おうと思っています」(Aさん)