住んでみたい街の理想と現実には、得てして大きな差があるものだ。憧れのあの街は果たして本当に素敵な街なのか? まったくノーマークだけど、実は住みやすい街は? 今回は「綱島」(横浜市港北区)について、ライターの金子則男氏が解説する。
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東急東横線は、両端の渋谷と横浜をはじめ、中目黒、自由が丘、武蔵小杉など、SUUMOの「住みたい街ランキング」で上位に入る駅が目白押し。首都圏屈指の人気路線ですが、今回取り上げる綱島も、急行が停車する東横線の主要駅です。かつては「綱島温泉」という駅名で、温泉街として栄えた過去も持つ綱島ですが、なぜ今、この街が要注目なのでしょうか。
鉄道は東急東横線の1線のみですが、横浜まで9分、渋谷まで21分と、交通の便は上々です。しかも2022年度には駅のすぐ東側に、相鉄・東急直通線の「新綱島駅」(仮称)ができる予定で、これが完成すれば新横浜駅は隣駅ですし、目黒線経由で地下鉄に乗り入れ、都心部にもダイレクトに行けることになりそうです。東横線はそのまま東京メトロ副都心線に乗り入れていますし、鉄道の便は申し分ありません。
道路状況は、鉄道の便の良さとは対照的に、少々厄介です。頼みの綱となる綱島街道は拡幅計画が進行中ですが、果たしていつ完成するのやら……。駅前は非常にゴチャゴチャしていて、いつも混雑しており、狭い歩道からはみ出さんばかりに歩く通行人と車の距離が近く、ヒヤヒヤします。路線バスは大変充実していますが、バス乗降場周辺の混雑もすごいです。新綱島駅開業の折には状況も少しは改善しそうですが、道路状況については長い目で見る必要がありそうです。
次世代都市型スマートシティプロジェクトが進行中
タワマンで名を馳せる武蔵小杉や、慶應大学のキャンパスがある日吉に比べると地味な存在だった綱島ですが、2016年に大きなトピックがありました。iPhoneやiPadでおなじみのAppleが、綱島に日本初の開発拠点を作ったのです。同社の隣では、パナソニック、ホンダ、野村不動産、慶應大学などが参画した次世代都市型スマートシティプロジェクト「綱島SST(Tsunashima SST)」も進行中。住宅と商業施設が併設された空間で、エネルギー、安全性、自動化、省力化など、持続可能なまちづくりの研究が進められています。