コロナ・ショックは私たちの生命だけでなく、老後資金も脅かそうとしている。これまでのように「日本円」だけでコツコツ貯めることの危うさが、コロナによって浮き彫りになった。
日本経済は戦後最悪の大打撃を受けている。今年4~6月期の実質GDP(国内総生産)成長率は年率マイナス20%超えで過去最悪になるといわれ、40万人以上が失業するという予測もある。ボーナスひとつとっても「夏のボーナスは一部カットで済んだが、冬はゴッソリ減りそう」といった不安の声があちこちで聞かれる。
そんな経済パニックが直撃するのが、老後資産を「日本円」でしか持っていない人たちだ。そもそも日本人の金融資産(現金、株、債券、保険など)の96%が円ベースで、円以外の資産を持っている人がほとんどいないのが実情だ。「日本で暮らしている以上、日本円がいちばん使いやすいから」という理由だろう。
たとえば、日本円だけでなく、「金(ゴールド)」でも資産を持っていた人はどうなっていたか。5月18日、東京商品取引所では史上初めて1g=6000円を超えた。年初は5303円だったので、コロナ危機で10%以上も値上がりしたことになる。もし金を持っていたら、ボーナス減を取り戻せたかもしれない。
不幸中の幸いで、アメリカやイタリア、スペインなどに比べると、いまのところ日本の新型コロナによるダメージは少ないかもしれない。しかし、この先、日本だけが深刻なダメージを受ける新たな感染症が流行したり、地震などの災害が発生したりして、日本経済だけが壊滅する──そうした事態が絶対にないとは言い切れない。そんなとき、老後資金を日本円だけで貯めていては、ダメージは計り知れないだろう。