中国本土メディアによれば、今回の政府活動報告書は通年の約半分となる1万字程度の字数にもかかわらず、“就業”という文言が39回も使われている。2018年の報告書では22回しか使われておらず、政府が現在、如何に雇用問題を重視しているかがよくわかる。
経済成長は一人ひとりの人民にとって意味のあるものでなければならない。規模だけ大きい公共投資、金融緩和は、一部の産業、企業、投機家の過剰で不当な利益を生み出してしまうリスクも大きい。その中には、汚職が含まれるだろうし、本来淘汰されるべき企業を生き返らせ、激しい生き残り競争の過程で起きるだろう産業構造変化を遅らせてしまうリスクがある。
投資家としては、特定の産業、企業の業績が良くなったり、市場に流入する資金量が大きく増えたりすることが望ましいが、習近平政権は、政治でも、経済でも、安定を求めている。中国政府が長期的には適切な政策を行おうとしていることは理解できるが、何とも悩ましい限りである。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。