コロナ禍により営業自粛を強いられた飲食店は、テイクアウトやデリバリーに活路を求めた。本来なら食品衛生法により飲食業界の許認可はかなり細分化されていて、飲食店の営業許可だけでは店内で提供している食材や食べ物を、すべてテイクアウトに回していいわけではない。しかし、いまは緊急時のため、保健所も実質目をつむっている状態だという。そうなると、これから迎える梅雨と夏は、食中毒の急増も懸念される。
食中毒には主に「ウイルス性」と「細菌性」がある。前者は主に冬に、後者は夏に流行する。ウイルスが低温乾燥で活発になる一方、細菌は高温多湿で増殖しやすい傾向にあるからだ。代表的な細菌には、サルモネラやカンピロバクター、O157、黄色ブドウ球菌などがある。
東京都福祉保健局によると、昨夏(7~8月)の細菌性食中毒事例は月100件以上で、前月までの5倍近くにのぼった。温度管理が難しいデリバリーの食事は特に危険で、実際に昨年8月、東京・墨田区の弁当店の仕出し弁当で86人の集団食中毒が発生している。
具体的にはどのような食材に注意すべきか。北海道大学名誉教授の一色賢司さん(食品衛生学)が解説する。
「フルーツや刺身など、ナマ物はデリバリーの食事に向きません。特に生魚の表面には、海水に含まれる腸炎ビブリオ菌が付着しています。この菌は10℃で増殖し始め、15℃以上になると活発に活動するので、持ち帰る場合は、必ず保冷剤などで冷やしてください」