年初に2万4000円台だった日経平均株価は、「コロナショック」で3月19日には1万6000円台まで暴落。6月に入って2万2000円台まで戻したとはいえ、改めて「投資」のリスクが顕在化した。
近年、国は「貯蓄から投資へ」と喧伝してきた。NISA(少額投資非課税制度)など投資による利益が非課税になる制度も設けられ、スズメの涙ほどの利息しかつかない定期預金を貯め込んでいる人は、“お金に働いてもらうチャンスを逃している”と揶揄されてきた。
しかし、「景色は一変しつつある」とファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の星川秀幸氏はいう。
「なかには保有株が下落するなか、損切りのタイミングを失って資産を半分以下にしてしまった人がいます。株だけでなく、世界の株や債券などに分散投資して低リスクだと思われていた投資信託もコロナショックで軒並み下落しました。
投信も長期保有して徐々に資産をかさ上げしていくためには適した商品ですが、どうしても元本割れリスクからは逃れられない。感染拡大は収まりつつあるとはいえ、投資家のマインドがすぐ戻るわけではなく、“第2波”などのリスクも考えておくべきです」
そこで星川氏は「低リスク運用をするくらいなら、すべて貯金して利息分の額だけ働くという考え方がある」という。
「老後資産の中から1000万円を投資に回し、低リスクの年利3%で10年運用できていたのに、コロナショックで元本割れしてしまったという話を聞きました。
それなら、年利3%ぶんだけ『働いて稼ぐ』という考え方もある。たとえば時給1500円の新聞配達で1回2時間、週3回働くと、1年で約45万円、1000万円の約4%にあたる収入になります」
“投資から貯蓄へ”という逆流が起きるか。
※週刊ポスト2020年6月12・19日号